贈与とは、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の約束することで成立する契約です。なかには遺贈(遺言による贈与)のように、要式を満たした意思表示だけで成立するものもありますが、こちらでは贈与契約とりわけ生前贈与についてお話をさせていただきます。
通常、贈与をすると気になるのが贈与税について。贈与税には基礎控除額というものがあります。年間110万円までであれば贈与税を払うことなく、適法に資産の移動をすることができるわけです。当然ながら後に争いにならないよう贈与契約書を取り交わしたり、振込にすることでお金の流れをわかるようにしておくなどの工夫は必要です。
できれば税金は少なくしたいものです。贈与税については基礎控除のほかにも配偶者控除、相続時精算課税といった制度がありますのでこれから説明したいと思います。
1.特例の概要
結婚して20年以上になる夫婦間で、住んでいる家または住むための家の購入資金の贈与があった場合は、上記の基礎控除110万円以外に最高2000万円まで贈与税がかからないという特例(相法21条の6)
2.特例を受けるための要件
1)結婚して20年を過ぎた後に贈与があったこと(1年未満の期間は切り
捨てで計算)
2)夫または妻からもらった財産が住んでいる家または住むための家の購入
資金の贈与であること
3)財産をもらった年の翌年の3月15日までに上記の家に住んでいて、今
後も住み続けること
4)財産をもらった年の翌年2月1日から3月15日までに配偶者控除の特
例を受けるための申告書を管轄税務署に届出ること
3.申告書を提出する時の添付書類
1)財産をもらってから10日経過後に作成された戸籍謄本または抄本
2)財産をもらってから10日経過後に作成された戸籍の附票の写し
3)登記事項証明書(登記簿謄本)
4)居住の確認が取れる住民票の写し
4.注意点
1)同じ夫または妻の間では一生に一度しか利用できない制度である
2)贈与税を控除(無税)にする制度なので、不動産取得税と登録免許税は
かかる
3)住宅ローンが残っていると、金融機関の承諾が必要になる
1.特例の概要
贈与税の課税制度には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。相続時精算課税制度は、手短に言えばおじいちゃんやおばあちゃんの資産を子供や孫に渡すための制度です。
もらった財産が2500万円を超えた場合は、超えた部分の20%を贈与税として納め、相続発生時に払いすぎていたら還付、足りなければ追納するという特例です(相法21条の9,12,13)。早い話が、今のうちに贈与してしまうが、税金の精算は相続時に行いますよという話です。
2.特例を受けるための要件
1)あげる人が65歳以上の親(父、母ごとに選べます。住宅取得資金の特
例については年齢の制限がありません)
2)もらう人があげる人の推定相続人(相続人になる人)で20歳以上であ
ること(子供がなくなっている時は、20以上の孫でも可)
3)最初に財産をもらった年の翌年3月15日までに「相続時精算課税選択
届出書」の特例を受けるための申告書を管轄税務署に届出ること。
3.申告書を提出する時の添付書類
1)財産をもらった日以後に作成された、もらった人の戸籍謄本または抄本
2)財産をもらった日以後に作成された、もらった人の戸籍の附票の写し
3)財産をあげた人の住民票の写し
4)財産をあげた人の戸籍の附票の写し
4.注意点
1)いったん選択すると、以後、暦年課税に変更することができない。
2)不動産取得税がかかる。
3)登録免許税が高くなる(相続に比べ税額が5倍になる)。
5.相続が発生すると
財産をあげた人が亡くなると、もらった財産額を相続財産に加算して相続税の計算をします。その結果、相続税が基礎控除額以下であれば相続税の申告は必要ありません。ただし、既に納めた贈与税の還付を受けるには、相続税の申告をする必要があります。